「等脚台形とは、普通の台形と何が違うのだろう」「底角や対角線が等しいと習ったものの、それが定義なのか性質なのか分からない」と感じる方は少なくありません。
学校で学んだ図形の用語は、しばらく使わないと記憶が曖昧になります。とくに等脚台形は、二等辺三角形や平行四辺形と性質が似ているため、久しぶりに見ると混同しやすい図形です。
先に結論を申し上げると、等脚台形とは、平行でない2辺の長さが等しい台形です。この平行でない2辺を「脚」と呼ぶため、脚が等しい台形という名前が付いています。
等脚台形には、同じ底辺に接する2つの角が等しい、2本の対角線の長さが等しい、左右対称になるといった性質があります。ただし、これらは基本的に定義から導かれる性質であり、最初から与えられる条件とは区別して考える必要があります。
この記事では、図形を記号の暗記だけで済ませず、「なぜそうなるのか」を順序立てて説明します。定義、証明、判定条件、面積、よくある間違いまで一つずつ確認していきましょう。

等脚台形の定義を一言で表すと「脚が等しい台形」
四角形ABCDを、頂点が順番に並ぶように考えます。上側の辺をAB、下側の辺をCDとし、ABとCDが平行であるとしましょう。
このとき、平行ではない残りの2辺ADとBCが同じ長さであれば、四角形ABCDは等脚台形です。記号で表せば、次の2条件を満たします。
- AB∥CD
- AD=BC
大切なのは、「平行な辺が等しい」のではなく「平行でない辺が等しい」という点です。ここを取り違えると、平行四辺形など別の図形と混同してしまいます。
まず台形の意味を確認しておきましょう
台形は、一般に「向かい合う辺のうち、少なくとも1組が平行な四角形」と説明されます。一方で、教材や国によっては「平行な辺がちょうど1組だけある四角形」と定義することもあります。
前者を広い定義、後者を狭い定義と考えると分かりやすいでしょう。広い定義では平行四辺形も台形の一種になりますが、狭い定義では平行四辺形を台形に含めません。
問題を解くときは、その教材がどちらの定義を採用しているかを確認することが重要です。定義が違えば、長方形や正方形を等脚台形に含めるかどうかも変わるからです。
ただし、学校の基本的な問題で描かれる等脚台形は、通常、上底と下底の長さが異なり、左右の脚が斜めになった形です。本記事でも、特に断らない限り、この一般的な形を中心に説明します。
脚とは平行でない2つの辺のことです
台形には、2種類の辺があります。互いに平行な2辺が「底辺」、平行でない残りの2辺が「脚」です。
日常語の「脚」から、図の下に伸びている辺だけを想像するかもしれません。しかし、図形を回転させても脚は脚のままです。斜めに描かれているか、縦に描かれているかは関係ありません。
四角形ABCDでAB∥CDなら、ABとCDが底辺、ADとBCが脚です。等脚台形では、このADとBCが等しくなります。
「等脚」という言葉を見たら、等しいのは2本の脚であると押さえておけば、定義を思い出しやすくなります。
等脚台形と二等辺台形はほぼ同じ意味です
等脚台形は「二等辺台形」と呼ばれることもあります。英語の名称は「isosceles trapezoid」で、「isosceles」は二等辺という意味です。
二等辺三角形が2辺の等しい三角形であるのと同じように、二等辺台形は平行でない2辺が等しい台形を表します。日本語では、等しい辺が脚であることを明確にするため、「等脚台形」という呼び方が使われます。
教材によって表記が違っても、通常は同じ図形を指しています。ただし、答案では問題文に使われている名称に合わせるのが無難です。
等脚台形で使われる辺・角・線の名前
等脚台形の性質を理解するには、各部分の名前を整理しておく必要があります。用語が曖昧なまま証明を読むと、「どの角とどの角が等しいのか」が分からなくなりがちです。
平行な2辺が底辺です
等脚台形ABCDでAB∥CDなら、ABとCDが底辺です。一般的な図では、短いほうを上底、長いほうを下底と呼びます。
ただし、「上底」「下底」は図の向きに合わせた呼び方です。図形を上下逆に描いても数学的な性質は変わりません。そのため、証明では「上底」「下底」よりも、ABやCDのように辺の名前で示すほうが確実です。
面積を求めるときは、2本の底辺の長さと、その間の垂直な距離である高さを使います。
脚と底辺がつくる角を底角と呼びます
底辺の両端にある角を底角と呼びます。下側の底辺CDに接する角は、頂点Dの角と頂点Cの角です。上側の底辺ABに接する角は、頂点Aの角と頂点Bの角になります。
等脚台形では、同じ底辺に接する底角がそれぞれ等しくなります。
- 下底側の底角:∠D=∠C
- 上底側の底角:∠A=∠B
「4つの角がすべて等しい」という意味ではありません。上側の角と下側の角は、一般には異なる大きさです。
対角線は向かい合う頂点を結ぶ線分です
四角形の隣り合っていない頂点を結ぶ線分を対角線と呼びます。等脚台形ABCDの対角線はACとBDの2本です。
等脚台形では、AC=BDが成り立ちます。左右対称の形をしているため、左上から右下へ引いた線と、右上から左下へ引いた線が同じ長さになるのです。
ただし、対角線が交点で互いに二等分されるとは限りません。対角線が互いの中点で交わるのは平行四辺形の代表的な性質です。等脚台形では、対角線の長さは等しくても、一般には交点で二等分されません。

定義と性質を分けると等脚台形が分かりやすくなる
等脚台形を学ぶうえで、最も大切な整理は「定義」と「性質」を区別することです。どちらも図形を説明する言葉ですが、役割が異なります。
定義は、その図形を決める最初の条件です
定義とは、あるものを何と呼ぶか決めるための約束です。本記事で基本とする等脚台形の定義は、次のとおりです。
台形のうち、2本の脚の長さが等しいものを等脚台形という。
したがって、AB∥CDでAD=BCと分かれば、定義により四角形ABCDは等脚台形だと判断できます。
定義は証明するものではありません。「なぜ脚が等しい台形を等脚台形と呼ぶのか」と証明するのではなく、そのように呼ぶと最初に決めているのです。
性質は定義から導き出せる事実です
定義を満たす図形について、さらに証明できる事実が性質です。等脚台形には、主に次の性質があります。
- 同じ底辺に接する2つの底角が等しい
- 2本の対角線の長さが等しい
- 底辺の垂直二等分線を軸として左右対称になる
- 1つの円に内接させることができる
- 向かい合う角の和が180度になる
これらは覚えて使ってよい性質ですが、証明問題では、どの性質を根拠にしたのかを明示する必要があります。
たとえば、「等脚台形だからAC=BD」と書く場合は、「等脚台形の対角線は等しいので」と理由を添えると、論理の流れが明確になります。
性質の逆が判定条件になることもあります
「等脚台形なら底角が等しい」という命題に対して、条件と結論を入れ替えたものが逆です。
つまり、「台形の底角が等しければ、その台形は等脚台形である」と考えます。この逆も成り立つため、底角が等しいことは等脚台形の判定条件として使えます。
同じように、台形の2本の対角線が等しければ、その台形は等脚台形だと判定できます。
ただし、数学では、ある命題が正しくても、その逆が必ず正しいとは限りません。逆を使うときは、定理として認められているか、別に証明できるかを確認する姿勢が大切です。

等脚台形の底角が等しくなる理由
等脚台形を見れば、左右が釣り合っているため底角も等しそうに見えます。しかし、証明では「見た目が左右対称だから」だけでは十分ではありません。
証明の基本は、台形の中に合同な三角形を見つけることです。そのために、上底の両端から下底へ垂線を下ろします。
上底の両端から下底へ垂線を下ろします
AB∥CD、AD=BCである等脚台形ABCDを考えます。点Aから辺CDへ垂線AEを下ろし、点Bから辺CDへ垂線BFを下ろします。
すると、三角形AEDと三角形BFCという2つの直角三角形ができます。
この2つの三角形では、次のことが分かります。
- ∠AED=∠BFC=90度
- AD=BC
- AE=BF
AEとBFが等しいのは、平行な2直線ABとCDの間の距離がどこでも一定だからです。ADとBCは等脚台形の定義により等しくなっています。
2つの直角三角形が合同になります
三角形AEDと三角形BFCは、斜辺ADとBCが等しく、さらに1組の辺AEとBFも等しい直角三角形です。
したがって、直角三角形の合同条件により、三角形AEDと三角形BFCは合同になります。
合同な図形では対応する角が等しいので、∠ADE=∠BCFです。点D、E、F、Cは同じ直線CD上にあるため、これは等脚台形の下底側の角が等しいことを意味します。
よって、∠D=∠Cが証明できました。
上底側の底角も等しくなります
AB∥CDなので、脚ADを横切る同じ側の内角の和は180度です。同様に、脚BCについても同じ側の内角の和は180度になります。
したがって、次の関係があります。
- ∠A+∠D=180度
- ∠B+∠C=180度
すでに∠D=∠Cと分かっているので、それぞれを180度から引けば、∠A=∠Bになります。
これにより、等脚台形では上底側と下底側のどちらについても、同じ底辺に接する底角が等しいことが示されました。
等脚台形の対角線が等しくなる理由
次に、2本の対角線ACとBDが等しくなる理由を確認します。ここでも合同な三角形を見つけるのが要点です。
下底を共有する2つの三角形に注目します
等脚台形ABCDに対角線ACとBDを引き、三角形ADCと三角形BCDに注目します。
この2つの三角形には、次の関係があります。
- AD=BC:等脚台形の定義
- DC=CD:共通する辺
- ∠ADC=∠BCD:等脚台形の底角
2組の辺とその間の角がそれぞれ等しいため、三角形ADCと三角形BCDは合同です。
合同な三角形の対応する辺は等しいので、三角形ADCのACと、三角形BCDのBDが等しくなります。
したがって、等脚台形の2本の対角線は等しいと証明できます。
対角線が等しい台形は等脚台形と判定できます
逆に、台形ABCDでAC=BDと分かっていれば、その台形は等脚台形だと判定できます。
これは見た目だけで判断しにくい図形に有効です。脚の長さが直接示されていなくても、平行な1組の辺と等しい対角線が確認できれば、等脚台形の性質を利用できます。
ただし、一般の四角形で対角線が等しいだけでは、必ずしも等脚台形にはなりません。「台形である」という前提が必要です。
たとえば、長方形の対角線も等しいため、狭い定義で台形を考える場合、対角線が等しい四角形をすべて等脚台形と呼ぶことはできません。
等脚台形は1つの円に内接できます
等脚台形では、∠A=∠B、∠C=∠Dです。また、平行線の性質から∠B+∠C=180度となります。
∠A=∠Bなので、∠A+∠Cも180度です。つまり、向かい合う角の和が180度になります。
向かい合う角の和が180度である四角形は、4つの頂点を1つの円周上に置くことができます。これを「円に内接する」といいます。
等脚台形が円に内接できることは、対角線や角度を扱う発展的な問題で役立ちます。台形の問題に円が組み合わされていたら、底角だけでなく円周角の性質も使える可能性があります。
左右対称であることから分かる性質
一般的な等脚台形は、2本の底辺の中点を通る垂直な直線を対称の軸として、左右が重なる線対称な図形です。
上底の中点をM、下底の中点をNとすると、直線MNは上底と下底の両方に垂直になります。この直線を折り目にするように図形を折れば、AとB、DとCがそれぞれ重なります。
この左右対称性を見ると、次の性質をまとめて理解できます。
- 左右の脚が等しい
- 同じ底辺の両端にある角が等しい
- 2本の対角線が等しい
- 上底と下底の中点が対称軸上に並ぶ
- 外接円の中心も対称軸上にある
もっとも、証明問題で「左右対称に見えるから」と書くだけでは不十分な場合があります。図形が本当に線対称であることを定義や合同から示すか、すでに証明された性質として使う必要があります。
座標を使うと等脚台形の性質を計算で確認できる
図形の合同が分かりにくい場合は、座標平面に置いて距離を計算する方法もあります。社会人の学び直しでは、図形と数式を結び付けるよい練習になるでしょう。
左右対称になるように4点を置きます
下底の長さをb、上底の長さをa、高さをhとします。下底の中点と上底の中点が同じ縦線上に来るように、4点を次のように置きます。
- D(−b÷2、0)
- C(b÷2、0)
- A(−a÷2、h)
- B(a÷2、h)
AとBのy座標はどちらもh、CとDのy座標はどちらも0なので、ABとCDは平行です。
脚ADの横方向の差は(b−a)÷2、縦方向の差はhです。脚BCも横方向の差の絶対値が(b−a)÷2、縦方向の差がhになります。
距離の公式を使うと、ADとBCはどちらも次の長さになります。
√{h²+((b−a)÷2)²}
したがってAD=BCとなり、この四角形は等脚台形です。
対角線の長さも同じ式になります
対角線ACの横方向の差は(a+b)÷2、縦方向の差はhです。対角線BDについても、横方向の差の絶対値と縦方向の差が同じになります。
よって、ACとBDはどちらも次の長さです。
√{h²+((a+b)÷2)²}
この計算からもAC=BDが確認できます。
合同を使う証明と座標を使う証明は、どちらか一方だけが正しいわけではありません。合同は図形同士の関係を直接示す方法であり、座標は長さを数式に置き換えて示す方法です。

等脚台形と他の四角形はどこが違うのか
四角形は、辺の平行関係、辺の長さ、角の大きさによって分類されます。等脚台形を理解するには、似ている図形との違いを見るのが有効です。
| 図形 | 平行な辺 | 等しい辺の特徴 | 対角線の主な性質 |
|---|---|---|---|
| 一般的な台形 | 1組 | 特に条件なし | 特に同じ長さとは限らない |
| 等脚台形 | 1組 | 2本の脚が等しい | 2本の長さが等しい |
| 平行四辺形 | 2組 | 向かい合う辺が等しい | 交点で互いに二等分する |
| 長方形 | 2組 | 向かい合う辺が等しい | 等しく、交点で二等分する |
| ひし形 | 2組 | 4辺がすべて等しい | 直角に交わり、互いに二等分する |
| 正方形 | 2組 | 4辺がすべて等しい | 等しく、直角に交わり、二等分する |
平行四辺形との違いは平行な辺の組数です
一般的な等脚台形は、平行な辺が1組です。これに対し、平行四辺形は向かい合う2組の辺がそれぞれ平行です。
また、等脚台形では平行でない2本の脚が等しく、平行四辺形では向かい合う辺がそれぞれ等しくなります。
対角線についても違いがあります。等脚台形では対角線の長さが等しくなりますが、交点で互いに二等分するとは限りません。平行四辺形では対角線は互いに二等分しますが、長さが等しいとは限りません。
長方形を等脚台形に含めるかは定義によります
長方形には2組の平行な辺があり、向かい合う辺の長さも等しくなっています。そのため、「少なくとも1組の辺が平行な四角形」を台形とする広い定義では、長方形は台形の条件を満たします。
さらに、どちらか1組の平行な辺を底辺と考えると、残りの2辺である脚も等しくなります。この定義に従えば、長方形を等脚台形の特別な場合と考えることができます。
一方、「平行な辺がちょうど1組の四角形」を台形とする狭い定義では、長方形は台形ではないため、等脚台形にも含まれません。
この分類には定義上の流儀があるため、「長方形は絶対に等脚台形ではない」と一律に断定するのは適切ではありません。試験や教材では、そこで採用されている定義に従いましょう。
ひし形とは等しい辺の位置が違います
ひし形は4辺がすべて等しい平行四辺形です。等脚台形は、基本的には2本の脚だけが等しく、2本の底辺は異なる長さでも構いません。
また、ひし形の対角線は通常、長さが異なりますが、直角に交わります。等脚台形の対角線は長さが等しい一方、通常は直角には交わりません。
「辺が等しい」という共通点だけで図形を判断せず、どの辺が等しいのか、平行な辺が何組あるのかを見る必要があります。
等脚台形を見分けるための判定条件
問題では、最初から「等脚台形ABCD」と書かれているとは限りません。与えられた条件から、等脚台形かどうかを判定することがあります。
台形であることが分かっている場合、次のいずれかを示せれば、等脚台形だと判定できます。
- 2本の脚が等しい
- 同じ底辺に接する2つの底角が等しい
- 2本の対角線が等しい
- 左右対称の軸があり、2本の底辺に垂直である
- 円に内接する台形である
最初の「2本の脚が等しい」は定義そのものです。それ以外は、等脚台形と同値になる性質を利用した判定です。
判定では台形であることを先に確認します
たとえば、AC=BDという条件だけを見て、すぐに等脚台形だと判断してはいけません。対角線が等しい四角形には長方形などもあります。
先にAB∥CDのような平行関係を確認し、そのうえで脚、底角、対角線などの条件を見る必要があります。
答案では、次のような順番で書くと論理が整います。
「AB∥CDより、四角形ABCDは台形である。またAC=BDである。対角線の長さが等しい台形は等脚台形であるから、四角形ABCDは等脚台形である。」
このように、「台形であること」と「等脚になる条件」を分けて示すのが要点です。
等脚台形の面積は普通の台形と同じ公式で求める
等脚台形の面積公式は、一般の台形と変わりません。上底をa、下底をb、高さをh、面積をSとすると、次の式になります。
S=(a+b)×h÷2
脚が等しいことは、面積公式そのものには直接現れません。ただし、高さが分からない問題では、等脚であることを利用して高さを求められます。
高さが分からないときは両側に直角三角形を作ります
下底が上底より長い等脚台形を考えます。上底の両端から下底に垂線を下ろすと、左右に合同な直角三角形ができます。
下底と上底の長さの差を左右で均等に分けるため、直角三角形の横の辺は次の長さです。
(下底−上底)÷2
脚の長さをl、横の辺をx、高さをhとすると、三平方の定理から次の関係が成り立ちます。
h²+x²=l²
したがって、高さは次の式で求められます。
h=√(l²−x²)
x=(b−a)÷2を代入すれば、次の形になります。
h=√{l²−((b−a)÷2)²}
具体的な数値で計算してみましょう
上底が6センチメートル、下底が14センチメートル、脚が5センチメートルの等脚台形を考えます。
上底と下底の差は8センチメートルです。この差は左右に均等に分かれるため、片側の直角三角形の横の長さは4センチメートルになります。
脚5センチメートルが直角三角形の斜辺なので、高さhは次のように求められます。
h=√(5²−4²)=√9=3
高さは3センチメートルです。したがって、面積は次のとおりです。
(6+14)×3÷2=30
面積は30平方センチメートルになります。
この問題では、等脚台形を中央の長方形と左右の合同な直角三角形に分けて考えると、計算の意味が見えやすくなります。
脚と底辺の長さによっては図形を作れません
高さの式で平方根の中が負になる場合、その長さの組み合わせでは実際の等脚台形を作れません。
脚の長さlは、底辺の長さの差の半分以上である必要があります。
l≧|b−a|÷2
等号になる場合は高さが0になり、通常の四角形としてはつぶれた形になります。そのため、面積をもつ等脚台形を作るには、実質的に脚が底辺差の半分より長くなければなりません。
等脚台形の中線にも便利な性質がある
台形の2本の脚の中点を結んだ線分を中線と呼びます。中線は2本の底辺と平行で、その長さは上底と下底の平均になります。
上底をa、下底をbとすると、中線の長さmは次のとおりです。
m=(a+b)÷2
台形の面積公式は、中線を使うと次のように表せます。
面積=中線×高さ
これは、(上底+下底)÷2が中線の長さだからです。公式を別々に暗記するのではなく、底辺の平均に高さを掛けると理解すると忘れにくくなります。
等脚台形では、中線の中点も左右対称の軸上にあります。上底、下底、中線の中点が一直線に並ぶ様子からも、図形の対称性を確認できます。
等脚台形の問題でよくある間違い
平行な2辺の長さも等しいと思い込む
等脚台形で等しいのは、原則として平行でない2本の脚です。上底と下底の長さは異なっていて構いません。
上底と下底が等しく、同じ向きに平行に配置されている四角形は、平行四辺形になると考えられます。一般的な等脚台形の図では、上底と下底には長さの差があります。
斜めの辺ならすべて脚だと思う
脚は見た目の傾きではなく、平行な2辺以外の辺として決まります。図形が回転していても、平行関係を確認すれば底辺と脚を区別できます。
問題用紙では、台形が横向きや逆さまに描かれることもあります。「上にある辺が上底」と見た目だけで決めず、まず平行な辺を探しましょう。
見た目だけで等脚台形と判断する
左右対称に見える図でも、問題に等しいことを示す印や条件がなければ、脚が等しいとは限りません。
数学の図は、条件を理解しやすくするための補助です。正確な縮尺で描かれているとは限らないため、見た目ではなく、平行記号、等しい辺の印、角度、文章の条件を根拠に判断します。
底角が4つとも等しいと考える
等脚台形で等しいのは、同じ底辺に接する2角ずつです。∠A=∠B、∠C=∠Dですが、∠A=∠Cとは限りません。
仮に4つの角がすべて等しければ、四角形の内角の和は360度なので、各角は90度です。その図形は長方形になります。
対角線が互いに二等分すると勘違いする
等脚台形の対角線は同じ長さですが、通常は交点で互いに二等分しません。
「長さが等しい」と「交点で二等分される」は別の性質です。長方形では両方が成り立ちますが、一般の等脚台形では長さが等しいことだけが保証されます。
定義と判定条件を混同する
脚が等しいことを定義とする場合、底角や対角線が等しいことは性質です。しかし、逆も成り立つため、問題では判定条件として使えます。
このため、同じ内容が「性質」と「等脚台形になるための条件」の両方に登場します。どちら向きに論理を使っているのかを意識すると混乱しにくくなります。

等脚台形を使った証明答案の書き方
証明では、頭の中で分かっていることを、第三者が追える順番で書く必要があります。結論だけでなく、その根拠を一つずつ添えましょう。
最初に平行な辺を明確にします
台形の問題では、まずどの辺が平行なのかを確認します。「AB∥CDより」と書けば、同位角、錯角、同じ側の内角など、平行線に関する性質を使えるようになります。
図だけを見てAB∥CDだと思い込むのではなく、問題文の条件や平行を表す矢印を確認してください。
脚が等しいことの根拠を書きます
AD=BCが問題の条件なら「仮定より」、合同な三角形から導いたなら「合同な図形の対応する辺だから」と書きます。
すでに四角形ABCDが等脚台形だと与えられているなら、「等脚台形の定義よりAD=BC」と書けます。
証明済みの性質には名前を添えます
対角線の長さを使う場合は、「等脚台形の対角線は等しいからAC=BD」と書きます。底角を使う場合は、「等脚台形の同じ底辺に接する底角は等しいから」と説明します。
根拠のない等式を並べるよりも、短くても理由を添えた答案のほうが説得力があります。
底角が等しいことを示す答案例
AB∥CD、AD=BCである四角形ABCDについて、∠D=∠Cを示す場合は、次の流れで書けます。
- A、BからCDへ垂線AE、BFを下ろす。
- 平行線間の距離は等しいのでAE=BF。
- 仮定よりAD=BC。
- 三角形AEDと三角形BFCは、斜辺と他の1辺がそれぞれ等しい直角三角形なので合同。
- 合同な三角形の対応する角は等しいため、∠ADE=∠BCF。
- D、E、F、Cは同一直線上なので、∠D=∠C。
証明のコツは、最終的に示したい角を含む三角形を見つけ、その三角形を合同にするために何が必要かを逆向きに考えることです。
どこまで覚えればよいかは目的によって違う
日常の雑学として意味を知りたいだけなら、「脚が等しい台形」「底角と対角線が等しい」という3点を押さえれば十分です。
資格試験や入学試験で使う場合は、それに加えて、合同を用いた証明、判定条件、面積と高さの関係まで理解しておく必要があります。
図形問題が苦手な方は、性質を一度にすべて暗記するより、次の順番で整理すると負担が少なくなります。
- 平行な辺を見つける。
- 残りの2辺が脚だと確認する。
- 脚が等しければ等脚台形と判断する。
- そこから底角と対角線が等しいと導く。
- 高さが必要なら垂線を下ろして直角三角形を作る。
この流れを図と一緒に覚えると、定義と性質のつながりが自然に見えてきます。
等脚台形は身近な形にも見つけられる
等脚台形に近い形は、左右対称の橋脚、建築物の窓、台座、容器の側面、機械部品、道路標識の枠などに見られます。
もっとも、実物は厚みのある立体であり、寸法の誤差もあるため、数学的に完全な等脚台形とは限りません。それでも、底部を広くして安定感を出しながら左右対称に見せたい場面では、等脚台形に似た輪郭が使われます。
図形の知識は、計算問題だけのものではありません。建築物や製品を見るときに、「どの辺が平行か」「左右対称か」「対角線はどうなるか」と考えると、身近な形の見方が少し変わります。
等脚台形についてよくある質問
等脚台形と普通の台形の違いは何ですか?
普通の台形は、1組の向かい合う辺が平行であれば成立し、脚の長さに特別な条件はありません。等脚台形は、台形の条件に加えて、平行でない2本の脚が等しい図形です。
等脚台形の上底と下底は同じ長さですか?
一般的な等脚台形では、上底と下底の長さは異なります。等しいのは2本の脚です。底辺まで等しい場合は平行四辺形となり、どの分類に含めるかは台形の定義によって扱いが変わります。
等脚台形の4つの角はすべて等しいですか?
すべて等しいわけではありません。同じ底辺に接する2角が等しくなります。AB∥CDなら、∠A=∠B、∠C=∠Dです。
等脚台形の対角線は直角に交わりますか?
通常は直角に交わりません。等脚台形で保証されるのは、2本の対角線の長さが等しいことです。直角に交わることは、ひし形や凧形などで見られる別の性質です。
等脚台形の対角線は互いに二等分しますか?
一般には二等分しません。対角線が互いの中点で交わるのは平行四辺形の性質です。等脚台形では対角線は等しいものの、交点から各頂点までの長さがすべて同じになるわけではありません。
底角が等しければ必ず等脚台形ですか?
その四角形が台形であり、同じ底辺に接する2つの底角が等しいなら、等脚台形と判定できます。一般の四角形について角が2つ等しいだけでは不十分です。
対角線が等しければ必ず等脚台形ですか?
台形であることが前提なら、対角線が等しい台形は等脚台形です。しかし、一般の四角形では、対角線が等しくても等脚台形とは限りません。
等脚台形は必ず円に内接しますか?
はい。等脚台形では向かい合う角の和が180度になるため、4つの頂点が1つの円周上にあります。逆に、円に内接する台形は等脚台形になります。
等脚台形の面積に特別な公式はありますか?
面積は一般の台形と同じく、「(上底+下底)×高さ÷2」で求めます。脚の長さが与えられている場合は、左右に直角三角形を作り、三平方の定理で高さを求めます。
長方形は等脚台形ですか?
台形を「少なくとも1組の向かい合う辺が平行な四角形」と定義する場合は、長方形を等脚台形の特別な場合として扱えます。「平行な辺がちょうど1組」と定義する場合は含めません。問題文や教材の定義に従ってください。
まとめ
等脚台形とは、2本の脚の長さが等しい台形です。平行な2辺が底辺、平行でない2辺が脚であり、等しいのは基本的に脚のほうです。
等脚台形では、同じ底辺に接する底角が等しくなり、2本の対角線の長さも等しくなります。また、左右対称で、1つの円に内接できるという性質があります。
理解するときは、定義と性質を分けてください。「脚が等しい」は定義であり、「底角が等しい」「対角線が等しい」は定義から証明できる性質です。一方、それらの性質は逆向きに使うと、等脚台形の判定条件にもなります。
面積は普通の台形と同じ公式で求められます。高さが分からないときは、上底の両端から下底へ垂線を下ろし、左右にできる合同な直角三角形を利用します。
図形が斜めや逆向きに描かれていても、まず平行な辺を確認し、次に脚、底角、対角線を見る。この順番を守れば、見た目に惑わされにくくなります。
「平行な2辺を探す、残りが脚、脚が等しければ等脚台形」という流れを基本にしておくと、証明や面積の問題にも落ち着いて対応できるでしょう。

