等脚台形とは、平行でない2辺の長さが等しい台形です。
この2辺を「脚」と呼ぶので、名前と定義がそのままつながっています。
平行な2辺の長さが等しい、という意味ではありません。
見分けるときは、まず平行な辺を探し、次に残りの2辺が等しいという条件を読みます。
そこから底角や対角線の性質を使い、高さが必要なら垂線を下ろす、という順序で考えると、暗記した公式をどこで使うかが分かります。
まず「どの辺が脚か」を図と記号で押さえる
ここでは、Aを左上、Bを右上、Cを右下、Dを左下とし、四角形の周囲をA→B→C→Dと回る順に頂点を名付けます。
ABとCDが平行で、ABのほうが短い、へこみのない四角形を考えます。
この配置では、ABとCDが底辺、ADとBCが脚です。
AB∥CDの「∥」は平行、AD=BCは2本の脚の長さが等しいことを表します。
台形だと分かっている図でAD=BCなら、等脚台形の定義を満たします。
「上底」「下底」は図の置き方に関わる呼び方です。
短い辺を必ず上に描く決まりではなく、図を回しても平行関係と等しい長さは変わりません。
答案では「上の辺」より「AB」と書くほうが、どの辺のことか伝わります。
等脚台形は二等辺台形とも呼ばれます。
英語では、アメリカでisosceles trapezoid、イギリスでisosceles trapeziumという呼び方が使われます。
異なる呼び方を見たときも、単語だけでなく、その資料が示す辺と角の条件を読みます。
台形の定義は教材に合わせる
台形を「平行な対辺がちょうど1組ある四角形」とする説明と、「少なくとも1組が平行な四角形」とする説明があります。
後者なら平行四辺形も台形に含まれます。
ヒューストン大学の四角形教材も定義の違いに触れたうえで、ちょうど1組という立場を採用しています。
この記事も、平行な辺がちょうど1組で、AB<CDとなる配置を基本にします。
この前提なら「平行でない2辺」が脚としてはっきり決まります。
以降の証明や判定条件も、この前提で読んでください。
広い定義で台形を扱う場合に、「残りの2辺が等しい」だけを等脚台形の条件にすると、斜めの平行四辺形まで入ってしまいます。
しかし、その対角線は一般には等しくありません。
長方形を等脚台形に含める資料では、底角が等しい、底辺に垂直な軸に関して対称である、といった定義も併せて読まなければなりません。
つまり、「長方形が含まれるか」は単なる覚え間違いとは限らず、出発点の約束が違う場合があります。
試験では問題文や教科書の定義を使い、別の資料の定義を途中から混ぜないようにしましょう。

定義から使える性質と、まだ言えないこと
定義は「この条件を満たす図形をそう呼ぶ」という約束です。
一方、性質は、その約束を満たす図形について理由を付けて導く事実です。
等脚台形で脚が等しいことを定義に採用したなら、底角と対角線が等しいことは証明して得る性質になります。
| 部分 | 成り立つこと | 混同しやすいこと |
|---|---|---|
| 脚AD・BC | AD=BC | 上底と下底が等しいのではありません |
| 同じ底辺の両端の角 | ∠A=∠B、∠D=∠C | 4角すべてが等しいわけではありません |
| 対角線AC・BD | AC=BD | 交点が各対角線の中点とは限りません |
| 底辺の中点を通る軸 | 両底辺に垂直で、線対称になります | 図の見た目だけを証明の根拠にはできません |
たとえば下側の角が70°なら、もう一方の下側の角も70°です。
上側の角は、平行線を横切る同じ側の内角の和が180°になるので、180°−70°=110°となります。
4角の和も70+70+110+110=360°で確かめられます。
対角線は隣り合っていない頂点を結ぶ線分です。
「2本全体の長さが等しい」と「交点で半分ずつに分かれる」は別の話なので、交点の左右の長さまで等しいと書かないようにします。
底角が等しくなる理由を、合同な三角形から追う
底角を証明したいときは、その角を含む小さな三角形を作ると見通しがよくなります。
AとBから下底CDへ垂線を下ろし、足をそれぞれE、Fとします。
基本の配置では、下底上にD、E、F、Cの順に点が並びます。

AEとBFはともに底辺へ垂直です。
AB∥CDなので、平行な2直線の間の距離としてAE=BFが成り立ちます。
また、AD=BCは等脚台形の定義から分かります。
ここで直角三角形AEDとBFCを比べます。
斜辺がADとBC、もう1組の対応する辺がAEとBFです。
この2組が等しいので、「斜辺と他の1辺がそれぞれ等しい」という直角三角形の合同条件を使えます。
合同だから、対応する角∠ADEと∠BCFが等しくなります。
DEとCFは下底CD上の線分なので、これは∠D=∠Cを示したことになります。
さらに∠A+∠D=180°、∠B+∠C=180°から、上側の∠A=∠Bも導けます。
垂線の足が内側に来ることも説明できる
図だけを見ると、EとFが下底の内側にあることを決めつけたように感じるかもしれません。
そこで、下底の左端DからAの真下までの横方向の位置をx、上底をa、下底をb、高さをhと置いてみます。
2本の脚の長さの2乗は、左がx²+h²、右が(b−a−x)²+h²です。
脚が等しいのでx²=(b−a−x)²となります。
整理すると、b>aよりx=(b−a)÷2です。
これは正で、さらにx+a=(a+b)÷2はbより小さくなります。
したがって、AとBの真下はどちらも下底の内側です。
左右に残る長さもDE=FC=(b−a)÷2となり、面積を求めるときの「差を半分にする」理由につながります。
答案にするときは、条件と理由を一緒に書く
説明を答案へ移すなら、次の順序にすると第三者が追いやすくなります。
- A、BからCDに垂線AE、BFを下ろします。
- ∠AED=∠BFC=90°、平行線間の距離よりAE=BF、仮定よりAD=BCと示します。
- 斜辺と他の1辺がそれぞれ等しいので、△AED≡△BFCと書きます。
- 合同な三角形の対応する角より∠ADE=∠BCF、したがって∠D=∠Cと結びます。
問題にAD=BCが書いてあるなら理由は「仮定より」、等脚台形とだけ書いてあるなら「等脚台形の定義より」です。
同じ等式でも、どこから得たのかを分けると、根拠を飛ばさずに書けます。
対角線・対称性・円の性質はどうつながるか
対角線は「2辺とその間の角」で証明する
対角線ACとBDを引き、△ADCと△BCDを比べます。
AD=BCは脚の条件、DC=CDは共通の辺、∠ADC=∠BCDは先ほど示した底角の性質です。
2組の辺とその間の角がそれぞれ等しいので、△ADC≡△BCDとなります。
対応する辺ACとBDが等しく、対角線が等しいことまで証明できました。
底角の等しさを先に示すと、ここでは同じ内容を証明し直さずに使えます。
左右対称は底辺の中点を結ぶ軸に現れる
左右の直角三角形が合同で、中央のABFEが長方形になるため、上底と下底の中点は同じ垂直線上にあります。
その線を軸に折り返すと、AとB、DとCが重なります。
この線対称性からも、左右の脚、底角、対角線が対応することを理解できます。
ただし、証明の出発点で「左右対称に見える」と言うだけでは、脚が等しいという条件から対称性を導いたことにはなりません。
合同などで確かめた性質として使います。
向かい合う角の和が180°なので円に内接する
∠A=∠Bであり、平行線の性質から∠B+∠C=180°です。
したがって∠A+∠C=180°になります。
もう1組の向かい合う角も同じです。
凸四角形では、向かい合う角の和が180°なら、4頂点を1つの円周上に置けます。
等脚台形が円に内接するのはこのためです。
円周角を習った後の問題では、台形の角の条件を円の性質へつなげられます。
外接円の中心は、線分ABとCDの垂直二等分線上にあります。
等脚台形ではその2本が同じ対称軸になるため、円の中心も軸上に来ます。
ただし、円の中心が台形の内部にあるとは限りません。
性質を逆向きに使って等脚台形を見分ける
等脚台形なら底角や対角線が等しい、というのが性質です。
逆に「この台形は底角が等しいから等脚台形だ」と判断するときは、判定条件として使っています。
一般に命題の逆は自動的には成り立ちませんが、ここで挙げる条件は台形という前提の下で等脚であることと結び付きます。
平行な辺がちょうど1組の凸台形なら、次のいずれかを確かめる方法があります。
- 2本の脚が等しい。
- 同じ底辺に接する2つの底角が等しい。
- 2本の対角線が等しい。
- 両底辺に垂直な対称軸がある。
- 4頂点が1つの円周上にある。
底角が等しい場合は、垂線でできる三角形の角と高さが対応し、合同から脚が等しいと導けます。
円に内接する場合は、向かい合う角の和が180°という関係と平行線の角の関係を比べることで、同じ底辺の底角が等しいと分かります。
対角線による判定も、座標で理由を追えます。
D(0,0)、C(b,0)、A(x,h)、B(x+a,h)と置くと、AC²=(b−x)²+h²、BD²=(x+a)²+h²です。
AC=BDなら、整理してx=(b−a)÷2となります。
上底が下底の中央に来るので、左右の脚も等しくなります。
判定で先に確かめるのは、脚や対角線の長さより、図が台形の前提を満たすかどうかです。
対角線が等しい四角形には長方形もあります。
「対角線が等しいから等脚台形」とだけ書くと、前提が抜けます。
答案なら「AB∥CDで、他の1組は平行でないので台形である。
さらにAC=BDより、対角線が等しい台形だから等脚台形である」と、平行関係と判定条件を順に述べます。
問題で台形と与えられていれば、その前提を使えます。

面積は、脚ではなく高さを求めてから計算する
台形の面積は、上底をa、下底をb、高さをhとして、S=(a+b)×h÷2です。
等脚台形だけの別の面積公式が必要なわけではありません。
高さは平行な底辺間の垂直な距離で、斜めの脚の長さをそのまま代入することはできません。
同じ台形をもう1つ用意して回転させ、脚同士を合わせると、底辺がa+b、高さがhの平行四辺形を作れます。
2個分の面積が(a+b)×hなので、1個分は半分です。
底辺を足して2で割る理由を、この組み合わせから理解できます。
脚の長さが分かれば三平方の定理で高さを出せる
上底の両端から垂線を下ろすと、左右に残る横の長さはx=(b−a)÷2です。
脚の長さをlとすれば、直角三角形の斜辺がlなので、h²+x²=l²となります。
したがってh=√(l²−x²)です。
xの式を入れると、h=√{l²−((b−a)÷2)²}になります。
MathWorldの等脚台形の解説でも、この高さと面積の関係が示されています。
上底6cm、下底14cm、脚5cmなら、底辺の差は8cm、片側は4cmです。
高さは√(5²−4²)=√9=3cmとなります。
面積は(6+14)×3÷2=30cm²です。
別の方法でも確かめられます。
中央の長方形は6×3=18cm²、左右の直角三角形はそれぞれ4×3÷2=6cm²です。
18+6+6=30cm²となり、答えが一致します。
面積の単位はcmではなくcm²であることまで確認しましょう。
作れない長さの組み合わせもある
面積をもつ等脚台形には、l>(b−a)÷2が必要です。
等号だと高さが0となり、四角形が一直線につぶれます。
脚がそれより短いと、高さの式の平方根の中が負になり、指定された長さの図形は作れません。
たとえば上底6cm、下底14cmのまま脚を3cmにすると、左右に必要な横幅4cmより脚が短くなります。
斜辺が他の辺より短い直角三角形は作れないので、計算の途中で無理に平方根を求めるのではなく、条件を見直す場面です。
中線と座標で、同じ性質を別の形から確かめる
中線の長さは上底と下底の平均になる
台形の2本の脚の中点を結ぶ線分を中線と呼びます。
三角形で頂点と対辺の中点を結ぶ中線とは、どの点を結ぶかが違うので注意してください。
台形の中線は両底辺に平行で、長さm=(a+b)÷2です。
対角線を1本引くと、台形は2つの三角形に分かれます。
それぞれの中点連結定理を使うと、中線は上底の半分と下底の半分をつないだ長さになります。
等脚でない台形にも成り立つ性質です。
面積公式はS=m×hとも書けます。
上底6cm、下底14cmなら中線は10cmで、高さ3cmを掛ければ30cm²になります。
等脚台形では中線の中点も対称軸上にあり、両底辺の中点と一直線に並びます。
座標なら脚と対角線の長さを式で比較できる
対称軸を縦軸に合わせ、D(−b/2,0)、C(b/2,0)、A(−a/2,h)、B(a/2,h)と置きます。
ここでは0<a<b、h>0です。
上側の2点の高さがh、下側が0なので、AB∥CDが分かります。
脚では横の移動量の大きさが(b−a)÷2、縦の移動量がhです。
距離の公式から、ADもBCも√{h²+((b−a)÷2)²}になります。
対角線では横の移動量が(a+b)÷2に変わります。
ACもBDも√{h²+((a+b)÷2)²}となり、等しいことを計算でも確認できます。
脚の長さをlとすると、この対角線の式は√(ab+l²)とも表せます。
合同を使う証明は図形同士の対応を示し、座標を使う証明は長さを数式へ置き換えます。
両方を一度に暗記する必要はありませんが、図の見方がつかみにくいときに計算で確かめると、同じ性質を別の方向から理解できます。
他の四角形と混同しないための比べ方
大阪府の中学校数学ワークブックでは、長方形・ひし形・正方形の定義と対角線の性質がまとめられています。
等脚台形と比べるときは、「何が等しいか」だけでなく、平行な辺の組数も一緒に見ます。
| 図形 | 平行な対辺 | 対角線の主な性質 |
|---|---|---|
| 一般の台形 | この記事ではちょうど1組 | 等しいとは限りません |
| 等脚台形 | ちょうど1組、脚が等しい | 2本の長さが等しいです |
| 平行四辺形 | 2組 | 交点で互いに二等分します |
| 長方形 | 2組、4角が直角 | 等しく、互いに二等分します |
| ひし形 | 2組、4辺が等しい | 垂直に交わり、互いに二等分します |
| 正方形 | 2組、4辺が等しく4角が直角 | 等しく、垂直に交わり、互いに二等分します |
平行四辺形は向かい合う辺がそれぞれ等しい図形ですが、対角線の長さが等しいとは限りません。
長方形では両方が成り立つので、「長方形で成り立つこと」をそのまま等脚台形にも広げると間違えやすくなります。
ひし形は4辺が等しい点で、脚の2辺が等しい等脚台形とは条件が違います。
ひし形の対角線が等しくなるのは正方形の場合です。
一方、等脚台形の対角線は等しくても、通常は垂直ではありません。
特殊な数値例の見た目から一般の性質を決めないようにします。
問題を解き終わったら、図の条件と答えを照合する
最初に見るのは、図の印と問題文です。
左右対称に描かれていても、脚が等しいという条件や、それを導ける条件がなければ、見た目だけでは等脚台形だと決められません。
横向きや上下逆の図でも、平行記号から底辺を探せば同じ順序で考えられます。
角度の問題なら、同じ底辺の2角が等しいことと、同じ脚の両端の角の和が180°になることを使います。
証明問題なら、使った等式の隣に仮定・定義・合同などの理由を書きます。
面積なら、脚と高さを取り違えていないか、cm²などの単位を付けたかを見直します。
まとめ
意味を知りたい段階では、脚・底角・対角線の対応を押さえるところから始められます。
問題を解けるようになりたい場合は、垂線を引いて合同を作る理由と、高さを出す計算を自分の図で追ってみてください。
上底6cm、下底14cm、脚5cmの例で30cm²にたどり着き、長方形と三角形に分けても同じ答えになるかが、理解を確かめる一つの目安です。
窓、台座、容器の側面などにも、等脚台形に似た輪郭があります。
ただし、実物は厚みや寸法の誤差をもつため、数学的な条件を満たすとは限りません。
身近な形を眺めるときも、左右が似ている印象と、平行・等長という条件を分けて見ると、図形の意味がよりはっきりします。
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