ワールドカップで最も多くのゴールを決めた選手は、一般に「W杯得点王」と呼ばれます。正式な個人賞の名称はアディダス・ゴールデンブーツです。
ところが、最多得点の選手が2人以上いた場合はどうなるのでしょうか。また、年間最優秀選手を選ぶ「バロンドール」とは何が違うのでしょうか。
ゴールデンブーツ賞は、原則として大会中の得点数で決まり、同点の場合はアシスト数、さらに出場時間の少なさが順位決定に使われます。
つまり、印象や人気だけで決める賞ではありません。大会内で記録された数字をもとに順位が決まる、比較的分かりやすい賞です。
この記事では、ワールドカップ得点王の仕組み、歴代のトップスコアラー、記録にまつわる雑学、ゴールデンボール賞やバロンドールとの違いを整理します。
ワールドカップの「得点王」とは何か
ワールドカップの得点王とは、1回の本大会で最も多くのゴールを記録した選手を指します。現在は、その選手にゴールデンブーツ賞が贈られます。
ここで大切なのは、「ワールドカップ通算で最も多く得点した選手」と「その大会の得点王」は別だという点です。
たとえば、ある選手が複数の大会に出場して通算得点記録を伸ばしても、各大会で別の選手より得点が少なければ、その大会の得点王にはなりません。
| 呼び方 | 集計する範囲 | 意味 |
|---|---|---|
| 大会得点王 | 1回のワールドカップ本大会 | その大会で最も多く得点した選手 |
| 通算得点記録 | 選手が出場した複数大会の合計 | ワールドカップ本大会で積み重ねた総得点 |
また、通常の得点ランキングには、グループステージから決勝までの本大会で記録したゴールが含まれます。予選で決めたゴールは、本大会のゴールデンブーツ争いには加算されません。

正式名称は「ゴールデンブーツ賞」
現在の正式名称は、スポンサー名を含めたadidas Golden Boot(アディダス・ゴールデンブーツ)です。「Golden Boot」は、日本語にすると「黄金の靴」という意味になります。
この賞は1982年のスペイン大会から「ゴールデンシュー」として授与されるようになり、2010年の南アフリカ大会から「ゴールデンブーツ」という名称になりました。
1982年より前の大会にも得点ランキングは存在します。ただし、現在と同じ名称のトロフィーが当時から授与されていたわけではありません。
1930年から1978年までの選手を「ゴールデンブーツ受賞者」と表現する資料もありますが、厳密には当時の大会トップスコアラーを後世の一覧に含めたものです。
得点ランキングの2位にはシルバーブーツ、3位にはブロンズブーツが贈られます。ゴール数だけを見るのではなく、同点時の順位決定基準を使って1位から3位までを並べます。
W杯得点王はどうやって決まるのか
最優先されるのはゴール数
ゴールデンブーツ争いで最初に比較されるのは、もちろん大会中に記録したゴール数です。
決勝で得点したか、強豪国を相手に決めたかといった試合の重要度によって、1得点の価値が2点分になることはありません。グループステージの1点も決勝の1点も、得点ランキングでは同じ1点です。
ペナルティーキックによるゴールも、流れの中から決めたゴールも、得点数としては同じように数えられます。
得点数が同じならアシスト数を比較する
2人以上の選手が同じ得点数で並んだ場合は、次にアシスト数を比較します。アシスト数が多い選手が上位です。
これは、自分で得点するだけでなく、味方の得点をどれだけ生み出したかを見る基準といえます。
ただし、アシストは単純に「最後にパスを出した人」と決まるとは限りません。FIFAの技術部門による判定が用いられるため、一般的な試合速報サイトと公式記録が異なる場合もあります。
アシスト数も同じなら出場時間が短い選手
ゴール数とアシスト数がともに同じ場合は、大会での出場時間が少ない選手が上位になります。
同じ成果を、より短い出場時間で残した選手を高く評価する仕組みです。言い換えれば、得点やアシストの「時間当たりの効率」が判断材料になります。
- 大会中のゴール数が多い選手
- ゴール数が同じならアシスト数が多い選手
- アシスト数も同じなら出場時間が少ない選手

2010年大会は同点決着の分かりやすい例
2010年の南アフリカ大会では、トーマス・ミュラー、ダビド・ビジャ、ウェズレイ・スナイデル、ディエゴ・フォルランの4人が、いずれも5得点で並びました。
得点数だけなら4人全員が同率1位です。しかし、現在の順位決定方法では、ここからアシスト数などを比較します。
ミュラーは3アシストを記録していたため、ほかの3人を上回ってゴールデンブーツを獲得しました。ビジャとスナイデルはそれぞれ1アシストで並びましたが、出場時間の少なかったビジャがシルバーブーツ、スナイデルがブロンズブーツとなりました。
| 選手 | 得点 | アシスト | 最終順位 |
|---|---|---|---|
| トーマス・ミュラー | 5 | 3 | ゴールデンブーツ |
| ダビド・ビジャ | 5 | 1 | シルバーブーツ |
| ウェズレイ・スナイデル | 5 | 1 | ブロンズブーツ |
| ディエゴ・フォルラン | 5 | 0 | 4位 |
この例を見ると、「最も多く得点した選手」という説明だけでは不十分だと分かります。同点になった後の基準まで知っておくと、最終戦の得点王争いをより楽しめます。
歴代ワールドカップ得点王一覧
以下は、男子FIFAワールドカップにおける各大会のトップスコアラーです。1982年より前は、現在と同じゴールデンブーツ賞が授与されていたわけではないため、「大会トップスコアラー」として掲載しています。
| 大会年 | 選手 | 代表 | 得点 |
|---|---|---|---|
| 1930年 | ギジェルモ・スタービレ | アルゼンチン | 8 |
| 1934年 | オルドリッヒ・ネイエドリー | チェコスロバキア | 5 |
| 1938年 | レオニダス | ブラジル | 7 |
| 1950年 | アデミール | ブラジル | 8 |
| 1954年 | シャーンドル・コチシュ | ハンガリー | 11 |
| 1958年 | ジュスト・フォンテーヌ | フランス | 13 |
| 1962年 | ガリンシャ、ババ、レオネル・サンチェス、フロリアン・アルベルト、ワレンチン・イワノフ、ドラジャン・イェルコビッチ | 複数代表 | 各4 |
| 1966年 | エウゼビオ | ポルトガル | 9 |
| 1970年 | ゲルト・ミュラー | 西ドイツ | 10 |
| 1974年 | グジェゴシ・ラトー | ポーランド | 7 |
| 1978年 | マリオ・ケンペス | アルゼンチン | 6 |
| 1982年 | パオロ・ロッシ | イタリア | 6 |
| 1986年 | ゲーリー・リネカー | イングランド | 6 |
| 1990年 | サルヴァトーレ・スキラッチ | イタリア | 6 |
| 1994年 | オレグ・サレンコ、フリスト・ストイチコフ | ロシア、ブルガリア | 各6 |
| 1998年 | ダヴォール・シューケル | クロアチア | 6 |
| 2002年 | ロナウド | ブラジル | 8 |
| 2006年 | ミロスラフ・クローゼ | ドイツ | 5 |
| 2010年 | トーマス・ミュラー | ドイツ | 5 |
| 2014年 | ハメス・ロドリゲス | コロンビア | 6 |
| 2018年 | ハリー・ケイン | イングランド | 6 |
| 2022年 | キリアン・エムバペ | フランス | 8 |
| 2026年 | キリアン・エムバペ | フランス | 10 |

歴代得点王から分かる面白い雑学
1大会最多得点はフォンテーヌの13得点
男子ワールドカップの1大会最多得点記録は、1958年スウェーデン大会でフランスのジュスト・フォンテーヌが記録した13得点です。
フォンテーヌはわずか6試合で13得点を挙げました。1試合平均にすると2点を超えます。大会の試合数や戦術が変化した現代では、非常に更新しにくい記録の一つです。
2位は1954年大会のコチシュによる11得点です。1大会で2桁得点を記録した選手自体が少なく、フォンテーヌの記録がいかに突出しているかが分かります。
優勝できなくても得点王にはなれる
ゴールデンブーツはチーム成績ではなく、個人の得点記録を中心に決まります。そのため、得点王の所属代表が優勝するとは限りません。
2014年のハメス・ロドリゲスが所属したコロンビアは準々決勝で敗退しましたが、ハメスは6得点で大会得点王となりました。
2018年のハリー・ケインが所属したイングランドも最終順位は4位です。2022年のエムバペは決勝でハットトリックを達成しましたが、フランスはPK戦の末にアルゼンチンへ敗れました。
得点王は「優勝チームのエース」を選ぶ賞ではなく、あくまで大会の得点ランキングを表彰する賞です。
決勝トーナメント前に敗退した選手が得点王になった例もある
1994年大会では、ロシアのオレグ・サレンコが6得点でトップスコアラーとなりました。しかし、ロシアはグループステージで敗退しています。
サレンコはカメルーン戦の1試合で5得点を記録しました。これは男子ワールドカップ本大会における、1試合の個人最多得点記録です。
大会で長く勝ち残るほど出場機会は増えますが、短期間に大量得点すれば、早期敗退したチームから得点王が出る可能性もあります。
得点王が複数いた大会もある
現在はアシスト数や出場時間を使って順位を決めますが、過去には同じ得点数の選手が複数並び、そのままトップスコアラーとして扱われた大会があります。
1962年大会では、4得点を記録した選手が6人いました。1994年大会でも、サレンコとストイチコフが6得点で並んでいます。
したがって、昔の記録と現在の賞を比較するときは、当時と現在で順位決定ルールや表彰制度が異なる点に注意が必要です。
得点王を複数回獲得するのは難しい
ワールドカップは通常4年に一度しか開催されません。選手が好調な年齢で複数大会へ出場できても、得点王を繰り返し獲得するのは簡単ではありません。
2026年大会では、エムバペが2022年大会に続いてゴールデンブーツを獲得しました。大会形式、対戦相手、負傷、チーム戦術など多くの条件が変わる中で、連続して得点ランキングの頂点に立った点は注目に値します。
ゴールデンブーツとゴールデンボールの違い
名称が似ているため混同されやすいのが、ゴールデンブーツ賞とゴールデンボール賞です。
| 賞 | 主な対象 | 決まり方の特徴 |
|---|---|---|
| ゴールデンブーツ | 大会の得点ランキング1位 | 得点数、アシスト数、出場時間 |
| ゴールデンボール | 大会の最優秀選手 | 大会全体でのプレーや貢献を評価 |
ゴールデンブーツは数字を中心に決まります。一方のゴールデンボールは、得点だけでなく、試合への影響、チャンスメーク、守備、リーダーシップなどを含む総合的な評価です。
そのため、同じ選手が両方を受賞するとは限りません。
2022年カタール大会では、8得点のエムバペがゴールデンブーツを獲得しました。一方、ゴールデンボールは、アルゼンチンを優勝へ導いたリオネル・メッシが受賞しています。

ゴールデンブーツとバロンドールの違い
バロンドールは、フランスのサッカー専門誌「フランス・フットボール」が創設した個人賞です。男子の賞は1956年に始まりました。
ワールドカップのゴールデンブーツとは、対象期間、主催者、評価方法が大きく異なります。
| 比較項目 | W杯ゴールデンブーツ | バロンドール |
|---|---|---|
| 対象 | ワールドカップ本大会の出場選手 | 対象期間に活躍した世界の選手 |
| 対象期間 | 1回のワールドカップ本大会 | 原則として1シーズン |
| 主催 | FIFA | フランス・フットボール |
| 主な判断材料 | 得点数、同点時のアシスト数と出場時間 | 個人成績、決定的な活躍、チーム成績、フェアプレーなど |
| 選出方法 | 公式記録によるランキング | 各国の専門記者による投票 |
バロンドールは得点数だけでは決まらない
バロンドールでは、次の三つの基準が優先順位を付けて評価されます。
- 個人の成績と、決定的で印象的な活躍
- チームの成績と獲得タイトル
- 選手としての品格とフェアプレー
男子部門では、原則としてFIFAランキング上位100か国から各1人の専門記者が投票します。各記者が候補者を順位付けし、獲得ポイントの合計で受賞者が決まります。
したがって、リーグの得点王になった選手が、そのままバロンドールを獲得できるとは限りません。得点以外の働きや、大きな試合での活躍、チームのタイトルなども判断材料になります。
ワールドカップの活躍はバロンドールにも影響する
ワールドカップとバロンドールは別の賞ですが、対象期間にワールドカップが含まれていれば、大会での活躍が投票に影響することはあります。
ただし、「ワールドカップで得点王になれば必ずバロンドールを受賞できる」という規則はありません。
たとえば2010年大会でゴールデンブーツを獲得したトーマス・ミュラーは、その年のバロンドール受賞者ではありません。2022年大会で得点王となったエムバペも、2023年のバロンドールでは3位でした。
バロンドールは投票による総合評価であり、ゴールデンブーツのような単純な得点ランキングではありません。
「得点王」という言葉で混同しやすい賞
サッカーには、得点に関係する賞がいくつもあります。名称だけを見ると同じように感じますが、主催者や対象大会が異なります。
各国リーグの得点王
プレミアリーグ、ラ・リーガ、ブンデスリーガなど、それぞれの国内リーグにも得点王があります。
イングランドのプレミアリーグでは、得点王に「ゴールデンブーツ」が贈られます。ただし、これはFIFAワールドカップのゴールデンブーツとは別の賞です。
ヨーロッパ・ゴールデンシュー
ヨーロッパ・ゴールデンシューは、欧州各国の国内リーグで多くの得点を挙げた選手を比較する賞です。
リーグの競技水準に応じた係数を得点数に掛けてポイントを計算するため、単純なゴール数だけで決まるとは限りません。
ゲルト・ミュラー・トロフィー
バロンドールの表彰式では、得点力を評価するゲルト・ミュラー・トロフィーも授与されます。これも、ワールドカップのゴールデンブーツとは別の賞です。
「得点王」「ゴールデンブーツ」「ゴールデンシュー」という言葉を見たときは、どの大会や団体の賞なのかを確認すると混乱を防げます。

ワールドカップ得点王に関するよくある疑問
PK戦で決めたゴールは得点数に入る?
延長戦までの試合中に与えられたペナルティーキックによる得点は、個人の得点数に入ります。
一方、勝敗を決めるために行われるPK戦の成功は個人の大会得点には加算されません。PK戦は試合記録上の得点とは別に扱われます。
オウンゴールは誰の得点になる?
オウンゴールと公式に判定された場合、シュートを放った攻撃側選手の得点にはなりません。
ボールが枠内へ向かっていたか、守備側選手のプレーによって大きく軌道が変わったかなどを踏まえ、公式記録が決められます。
決勝で決めたゴールは多く評価される?
ゴールデンブーツの得点数では、決勝のゴールもグループステージのゴールも同じ1得点です。
ただし、決勝での活躍はゴールデンボールやバロンドールなど、総合評価型の賞で強い印象を残す可能性があります。
ハットトリックとは何点決めること?
1人の選手が1試合で3得点することをハットトリックと呼びます。3点を連続して決める必要はなく、途中でほかの選手のゴールが入っても成立します。
女子ワールドカップにもゴールデンブーツはある?
女子ワールドカップにもゴールデンブーツ賞があります。基本的に得点数を優先し、同点の場合はアシスト数、出場時間を使って順位を決めます。
まとめ|得点王争いはアシスト数と出場時間にも注目
ワールドカップの得点王には、正式にゴールデンブーツ賞が贈られます。
決め方は「得点数、アシスト数、出場時間」の順です。同じゴール数の選手が並んでいても、アシスト数や出場時間によって順位が変わる可能性があります。
ゴールデンボールは大会の最優秀選手を選ぶ賞、バロンドールは原則として1シーズンの活躍を専門記者の投票で評価する賞です。いずれもゴールデンブーツとは選考方法が異なります。
ワールドカップを観戦するときは、得点数だけでなく、次の順に確認すると得点王争いを深く楽しめます。
- 各選手のゴール数を確認する
- 同点なら公式記録のアシスト数を見る
- アシスト数も同じなら出場時間を見る
- 大会得点王と通算得点記録を分けて考える
大会ごとの得点ランキングは更新されるため、最終順位を確認するときはFIFA公式サイトの記録を見るのが確実です。
参考資料
- FIFA「adidas Golden Boot | Top scorers | FIFA World Cup 2026」(2026年7月20日確認)
- FIFA「Every FIFA World Cup top scorer」(2026年7月20日確認)
- FIFA「FIFA World Cup 2026 award winners」(2026年7月20日確認)
- FIFA「Mbappe pips Messi to Golden Boot」(2026年7月20日確認)
- France Football「Palmarès Ballon d’Or」(2026年7月20日確認)
- L’Équipe「Ballon d’Or 2025:投票者と選考基準」(2026年7月20日確認)

