「急ぎませんので」は、依頼を今すぐ処理しなくてもよいと伝える丁寧な表現です。
上司や取引先に使っただけで失礼と決まる言葉ではありません。
ただし、仕事で使うときは「何をしてほしいか」と「いつまでに必要か」も伝えると、相手が対応する時期を判断できます。
たとえば「急ぎませんので、資料をご確認ください」より、「本日中のご対応は不要です。
来週の会議で使うため、○月○日までに資料の修正の有無をお知らせいただけますと幸いです」と書けば、急がせない気持ちと必要な仕事の両方が伝わります。
言い換えを選ぶ前に、期限を相手へ任せられるのか、目安を相談したいのか、必ず必要な日時があるのかを決めましょう。
その違いから、場面に合う依頼文と、連絡後の対応まで説明します。
「急ぎませんので」が失礼に感じられるのはどんなとき?
「急ぎません」は、「急ぎませんので、ご都合のよいときにお願いいたします」のように使います。
「ません」は丁寧な形なので、同僚への連絡にも、上司や取引先への依頼にも使えます。
ただ、相手との関係や頼む内容によって、受け取られ方は変わります。
たとえば、相手にまとまった作業を頼むのに「急ぎませんので」とだけ添えると、作業量や締め切りを判断する負担は相手に残ります。
また、相手が対応日を調整している途中で「急がなくて大丈夫です」と繰り返すと、相手の仕事の進め方をこちらが決めているように響くこともあります。
依頼する側の事情を具体的に示したほうが、配慮の意図を伝えやすくなります。
文化庁の「敬語の指針」は、敬語を使うときの基本に相互尊重を置き、相手や場面に合わせる考え方を示しています。
別の答申では、場面に合わない過剰な敬意表現が意思疎通を妨げる場合にも触れています。
これらは「急ぎませんので」を個別に判定した資料ではありませんが、敬語の複雑さだけで丁寧さを決めないための参考になります。
普段からやり取りしていて、期限も共有できているなら、「急ぎませんので、よろしくお願いいたします」で通じる場面もあります。
初めて頼む仕事や、後の工程に影響する依頼では、相手が予定を組める情報を添えるほうが適しています。

「急ぎではない」と「期限がない」を分けて言い換える
水曜日に依頼し、翌週火曜日までに必要な仕事なら、今日中に終える必要はなくても期限はあります。
一方、参考になりそうな資料を都合のよいときに教えてもらうだけなら、返答日を決めなくても差し支えない場合があります。
会議や納品など、依頼した仕事の次に控える予定を見て、返答が遅れると何が困るかを考えると、次の3つから選べます。
| 依頼の条件 | 使いやすい表現 | 一緒に伝える情報 |
|---|---|---|
| 対応時期を相手に任せられる | ご都合のよいタイミングで | 何を知らせてほしいか。必要なら返信自体の要否 |
| 希望日はあるが調整できる | ○月○日ごろまでを目安に | 希望日と、難しい場合に日程を相談できること |
| その日時までに必ず必要 | ○月○日○時までに | 必要な回答・成果物、期限の理由、難しい場合の連絡先 |
本当に期限を設けないなら「ご都合のよいタイミングで」
返答が来週でも来月でも支障がないなら、「ご都合のよいタイミングで、参考資料をお知らせいただけますと幸いです」と書けます。
「お時間のある際に」「お手すきの際に」も、相手が時間を取れるときに対応してもらう表現です。
ただし、「お手すき」は、仕事に必要な締め切りの代わりにはなりません。
後から「いつ返してもらえるのだろう」と気になりそうなら、本当に期限が不要かを見直します。
返答がなくてもよい情報共有なら、「共有のみですので、ご返信は不要です」と、依頼のない連絡であることを示す方法もあります。
調整できる希望日なら「○日ごろまでを目安に」
「可能でしたら、○月○日ごろまでにお送りいただけますと助かります。
難しい場合は、対応可能な日をお知らせください」とすれば、希望日と調整の余地が伝わります。
「差し支えなければ、○月○日までを目安にご返信いただけますでしょうか」も同じ用途です。
この書き方では、相手から別の日程が出る可能性も受け入れます。
希望日を動かせないのに「目安」「可能でしたら」とだけ書くと、期限の強さが伝わりません。
調整できる範囲を自分の予定で確かめてから使いましょう。
必須の期限なら、日付・時刻と理由を伝える
翌日の会議資料に反映するため、前日の15時までに確認結果が必要なら、その日時を明記します。
「なるべく早めに」では、相手にとって今日中なのか数日以内なのか分かりません。
「翌日の会議で使用するため、○月○日15時までに修正の有無をご返信いただけますでしょうか。
難しい場合は、日程を調整しますのでお知らせください」と書けば、期限の理由と、間に合わない場合の動きも見えます。
相手が資料を読む時間に加え、自分が修正して次の担当へ渡す時間も見込んで依頼すると、必要な返答日を決めやすくなります。
上司・取引先への言い換えは、敬語と依頼内容を一緒に整える
「急いでないので、いつでも大丈夫です」は会話で使える言い方ですが、改まったメールでは「急ぎではございませんので、ご都合のよい際にお願いいたします」とすると丁寧です。
ただし、本当に時期を任せられる場合に使います。
期限がある場合の「急ぎではございませんが、○月○日までに」は矛盾しません。
「すぐに対応する必要はない」という緊急度と、「この日までには必要」という期限を伝えているからです。
「すぐにご対応いただく必要はございませんが、○月○日までにご確認いただけますと幸いです」としても伝わります。
少し改まった依頼なら、「恐れ入りますが」を用件の前に置く方法もあります。
文化庁の資料でも、相手への配慮を示す前置きの例として挙げられています。
毎文に足すより、依頼の入口で一度使い、その後は対象と期限を簡潔に示すほうが読み取りやすくなります。

そのまま整えて使えるビジネスメールの例文
依頼メールには、対象、頼む行動、必要な返答、期限を入れます。
「資料をご確認ください」だけでは、目を通せばよいのか、修正して返すのか、承認するのかが分かりません。
相手が終えたと判断できる行動まで書くと、返答後の行き違いも減らせます。
公益財団法人日本ICTテレコムユーザー協会のビジネスメール解説も、「何を」「いつまでに」してほしいかを明確にし、対応時間に余裕を持たせる考え方を紹介しています。
以下の○○や日付は、実際の仕事に合わせて置き換えて使ってください。
同僚に資料の確認を頼む
件名:○○資料の確認のお願い(○月○日まで)
お疲れさまです。
○○の資料を添付します。
本日中のご対応は不要ですので、○月○日までに、2ページ目の数値と担当名をご確認いただけますと幸いです。修正があれば該当箇所を、修正がなければその旨を、このメールへの返信でお知らせください。
よろしくお願いいたします。
対象を絞り、修正がないときの返答まで示した例です。
「問題がある場合だけ返信」とすると、返信がない理由が未確認なのか修正不要なのか分からなくなるため、確認済みと分かる返答が必要ならそのことを書きます。
返信の時期を相手へ任せる
いつもお世話になっております。
先日お話しした○○に関する参考資料がございましたら、お知らせいただけますでしょうか。急ぎではございませんので、ご都合のよいタイミングでご返信いただけますと幸いです。
どうぞよろしくお願いいたします。
期限のない情報提供の依頼に向く例です。
資料がなければ返答不要にしたい場合は、その条件も添えられます。
返答がないと次の仕事へ進めない用件には、次の期限付きの形を使います。
上司に判断・意見をもらう
お疲れさまです。
○○の提案資料を作成しましたので、ご確認をお願いいたします。
特に3ページ目の実施方針について、ご意見をいただけますと助かります。すぐにご対応いただく必要はございませんが、○月○日までにご返信いただけますでしょうか。
翌日の打ち合わせに反映する予定です。
ご都合が難しい場合は、調整可能な日時をお知らせください。
上司に何の判断を求めるのかが明確なら、資料のすべてに同じ詳しさで目を通してもらう必要があるのかも伝わります。
すでに打ち合わせで回答日を決めているなら、「先ほどご相談した○月○日までに」と共通認識を示しても構いません。
取引先にデータの送付をお願いする
いつもお世話になっております。
恐れ入りますが、○○の作成に必要な△△のデータをご送付いただけますでしょうか。
対象は○月分、形式はExcelファイルを希望しております。お急ぎいただく必要はございませんが、○月○日ごろまでを目安にお送りいただけますと幸いです。
難しい場合は、送付可能な日をお知らせください。
どうぞよろしくお願いいたします。
資料名だけでなく対象期間や形式を示すと、別のデータが届く行き違いを防ぎやすくなります。
この例では日程を相談できるため「目安」としています。
期日を動かせない場合は、その日までに必要な理由を添えた依頼へ直します。
一度「急ぎません」と伝えたあと、急ぎに変わったら
予定が変わり、返答を早めてもらいたくなったときは、先に伝えた条件が変わったことを説明します。
相手は「急ぎではない」という依頼に合わせて予定を組んでいるため、理由を示さず催促すると、相手の対応が遅かったように受け取られかねません。

先日は急ぎではない旨をお伝えしておりましたが、会議の日程が早まり、確認結果が○月○日までに必要となりました。
こちらの都合で恐縮ですが、同日15時までにご確認いただくことは可能でしょうか。難しい場合は、対応可能な時刻をお知らせいただけますと幸いです。
確認する範囲の調整も含め、改めて相談させてください。
変更の理由、新たに必要な日時、対応できるかの相談を一つの連絡にまとめた例です。
全資料の確認が難しいなら、会議に必要なページだけ先に確認してもらうなど、範囲を相談する余地もあります。
相手の返答を受けて、新しい日程や対象を合意してください。
返答を待つ余裕がない場合は、普段業務で使う電話やチャットで連絡が取れるか確かめます。
メールを送ったことだけで対応が決まったと考えず、相手が引き受けられるか、間に合わなければ別の担当や後の予定を調整できるかまで確認します。
送信前と返答後に、依頼が完了する条件を確かめる
送る前には、相手の立場で件名から読み直します。
対象の資料やリンクがあるか、頼む行動が一つずつ分かるか、返答先と期限が読めるかを見ます。
ファイルを添付したつもりでも抜けていれば、相手は作業を始められません。
同じ「○日まで」でも、相手の返信時刻と会議の開始時刻が同じでは、資料を直す時間がありません。
期限は後の予定から逆算し、相手が作業する時間も取れるかを考えます。
急な依頼になった場合は、短い理由を添えて対応の可否を相談します。
相手から「対応します」と返ってきたら、必要に応じて日程の認識をそろえます。
確認結果やデータが届いた後は、依頼した範囲がそろっているか、開ける形式かを確かめ、お礼を伝えれば完了です。
足りない部分があれば、対象を特定して追加で依頼します。
自分が「急ぎませんので」と依頼された側なら、「承知しました。
○月○日までに確認してご返信します」と予定を返せます。
必要な日が分からず他の仕事と調整できない場合は、「いつごろまでに必要でしょうか」と聞いて構いません。
依頼の時点で期限が共有できれば、行き違いによる催促を減らせます。
まとめ
「急ぎませんので」は、相手を急かさない気持ちを伝える表現です。
仕事では、期限を任せられる依頼か、希望日のある依頼か、必須の日時がある依頼かを先に決めると、言い換えを選べます。
相手に伝えるのは、用件、必要な返答、期限、調整が必要なときの連絡方法です。
予定が変わったらその事情を伝え、最後は依頼した結果がそろったところまで確かめましょう。
敬語を重ねるより、相手が次の行動を決められる一文を添えるほうが、配慮を形にできます。
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参考資料
- 文化庁「敬語の指針」:相互尊重と、場面に合う敬語の考え方。
- 文化庁「過剰な敬意表現」:過剰な表現と意思疎通の関係。
- 文化庁「あいさつや前置きの中の敬意表現」:依頼の前置きに使う「恐れ入りますが」などの例。
- 日本ICTテレコムユーザー協会「第20回 気持ちよく動いてもらえる 依頼メールの書き方」:依頼内容・期限・余裕を持った連絡の説明。
- 同協会「日本電信電話ユーザ協会 協会名称変更のご案内」:2021年の解説公開時の名称から、2026年7月1日に現在の名称へ変更したことの確認。
資料確認日:2026年11月1日。

