「聞いております」は正しい敬語?仕事で迷わない使い方と言い換えの判断軸

仕事のメールを考える男性と「聞いております」は正しい敬語かを示す見出し 仕事・文書・言葉

「その件は聞いております」は、仕事の会話やメールで使える敬語です。
ただ、相手が知りたいのが「情報が届いているか」ではなく「いつ対応してもらえるか」なら、この一文だけでは答えが足りません。

迷ったときは、誰から聞いたのか、どこまで確かめたのか、次に何をするのかの順に考えてみてください。
社内から共有を受けたなら「担当から聞いております」、相手から直接説明を受けたなら「伺っております」が候補です。
その後に、確認済みの内容や実際の対応を続けると、敬意と用件の両方が伝わります。

「聞いております」が丁寧にしているのは、話す相手への述べ方

「聞いています」は丁寧な言い方で、「聞いております」は自分側の状態をさらに改まって述べる形です。
文化庁の分類では「おる」は謙譲語II(丁重語)に当たります。
ここでは、話を聞いた自分側のことを、いま話している相手へ丁重に伝えています。

一方、「伺う」は「聞く・尋ねる・訪ねる」などに使う謙譲語Iで、行為の向かう先を立てる働きがあります。
誰に向けて丁重に話すかと、誰を立てるかは同じとは限りません。
この違いが、社内の担当者から聞いた話を取引先へ伝える場面で大切になります。

たとえば「日程変更の件は、弊社の田中から聞いております」と言えば、田中を高めずに、取引先へ改まった形で共有状況を伝えられます。
「弊社の田中から伺っております」だと、自社側の田中を立てる形になるため、この場面では「聞いております」が適しています。

社内の会話では、いつも「おります」にする必要はありません。
「山田さんから聞いています」も丁寧な表現です。
相手との関係や文書の調子に合わせ、改まりすぎて用件が読みにくくならない言い方を選べます。

会社の受付で名刺を差し出す男性と応対する女性。「伝わる敬語 ひとことに配慮を」の文字

誰から聞いたのかを、先に一文にする

自社内の共有を、社外の相手へ伝える

社内の担当者から連絡を受けたなら、まずその経路を示します。

日程変更の件は、弊社の田中から聞いております。
変更後の開始時刻を確認し、本日中に参加予定をご連絡いたします。

この例では、情報は届いているものの、時刻の確認はまだ終わっていません。
「聞いております」の後を「確認済みです」に置き換えると、実際よりも確認が進んでいるように伝わってしまいます。
予定や期限も、実行できる範囲で書きます。

担当者名を出す必要がない場合は、「社内で共有を受けております」でも伝わります。
誰が担当しているかを相手が知りたい場面では、共有の有無に加え、担当部署や連絡窓口を添えると話が進みます。

お客様や取引先から説明を受けた

取引先から直接希望を聞いた場合は、その相手を立てる「伺っております」が使えます。

ご希望の納期は、先日のお打ち合わせで伺っております。
対応できる日程を社内で調整し、明日午前中にご連絡いたします。

希望を聞いたことと、その日程を引き受けたことは別です。
まだ実現できるか分からない段階なら、「ご希望どおりに対応いたします」と確約せず、調整中であることを伝えます。

筆者自身は、社外の相手やお客様から聞いた内容については、日常的には「伺っております」を選ぶことが多く、「聞いております」はやや距離のある表現として慎重に扱っています。

これは筆者の使い方と感覚です。
「聞いております」が社外で一律に失礼になるという意味ではありません。
敬語としての働きを押さえたうえで、その場面で何を伝える必要があるかを考えると、言葉だけの正誤に偏らずに選べます。

言い換える前に、実際の対応状況を分ける

「聞いております」を別の丁寧な語へ置き換えるだけでは、意味まで同じになるとは限りません。
次の表は敬語の強さの順位ではなく、伝える内容の違いです。

実際の状態表現の候補併せて伝えること
情報共有を受けた聞いております/共有を受けております未確認の点があるか
立てる相手から話を聞いた伺っております聞いた希望と、決まった条件の区別
予約・注文・依頼を受け付けた承っております受け付けた内容と、まだ確約していない条件
事実を調べている途中確認中です確認先と次の連絡予定
資料などで確かめ終えた確認済みです確かめた日時・版・数量など
内容を知り、理解している承知しております/把握しております理解している範囲と必要な対応

「承っております」は、聞く意味と引き受ける意味を区別する

「承る」には、話を聞く、伝え聞く、受ける、引き受けるという用法があります。
予約や注文にしか使えない言葉ではありません。
ただ、依頼への返信で使うと引き受けた意味に受け取られる場合があるため、聞いた段階か、受付が済んだ段階かを文全体で伝えます。

「ご予約を承っております」は、予約を受け付けていることを伝える言い方です。
相手が予約内容を確かめたいなら、「〇月〇日、2名様で承っております」のように、必要な内容まで示します。

依頼が届いた段階で、まだ受けられるかを判断していない場合は、「ご依頼内容は拝見しました。
対応の可否を確認いたします」のように、受付と引受けを分ける方が明確です。
言い換えによって、引き受けていない仕事まで約束したように見せないことが大切です。

「確認しております」は、途中か完了かを補う

「資料を確認しております」だけでは、いま読んでいるのか、すでに確かめたのかが分かりにくい場合があります。
途中なら「現在、担当部署に確認中です」、終わったなら「最新版の資料と照合し、開始時刻は午後2時と確認済みです」と書き分けます。

人から聞いた話しかない場合は、「担当から午後2時と聞いております。
正式な案内を確認して、改めてお知らせします」とする方法もあります。
確認前に相手の予定が決まってしまいそうな場面ほど、情報の確かさを明示する必要があります。

「把握」「承知」「存じる」「認識」は、知っている範囲に合わせる

「把握しております」は、状況や経緯を捉えていることを伝える表現です。
概要しか分からないなら、「概要は把握しておりますが、発生時刻と影響範囲は確認中です」のように範囲を限定します。

「承知しております」は、内容を知り理解していることを述べる場面で使えます。
「聞いております」が情報を受けた経路や事実に重点を置くのに対し、理解した状態を伝えたい場合の候補になります。

「存じております」は、サービスや事実などを知っていることを丁重に述べる言い方です。
誰から聞いたかより、知っている状態に焦点があります。
人を知っていることを、その人への敬意も含めて述べるなら「存じ上げております」が候補です。

「認識しております」は、重要性や課題をどう受け止めているかを述べる報告書などで使えます。
ただし「問題を認識しております」とだけ返しても、解決の見通しは伝わりません。
必要な場面では、次に行う調査や対応を続けます。

情報を聞いた段階と確認中の状態を分け、午後3時までに確認状況を連絡すると伝える担当者の2コマ漫画

そのまま使う前に、場面に合わせて後半を直す

日程変更や資料の差し替え

会議時間の変更は、弊社担当から聞いております。
変更後は〇月〇日午後2時からと確認済みです。
当日はこの時刻に参加いたします。

これは、変更後の日時を実際に確かめた場合の例です。
未確認なら「変更後の日時を確認中です」に替えます。
資料の差し替えなら、日時の代わりに版番号やファイル名を確かめ、旧版を使わないよう関係者へ共有します。

問い合わせや指摘を受けたとき

ご指摘の件は、担当から報告を受けております。
現在、発送記録を確認中です。
本日午後3時までに、確認状況をご連絡いたします。

相手が待っているのは、聞いた事実だけでなく、何がどう進むかです。
例文の確認対象や時刻は、そのまま約束せず、実際の業務に合わせます。
原因がまだ分からないなら、原因の説明を作らず、分かっている事実と調べている内容を分けます。

約束した時刻までに結論が出ない場合も、連絡をせず待たせるより、その時点の確認状況と次の予定を知らせる方が、相手は判断しやすくなります。

概要だけを聞いているとき

概要は聞いておりますが、対象となる資料の版が分かっておりません。
ファイル名を教えていただけますか。

「詳細を確認させてください」だけで終わらず、何が不足しているかを書くと、相手が答えやすくなります。
自分で社内確認できることは担当者へ確かめ、相手に必要な説明を何度も繰り返してもらわない配慮もできます。

「聞いておりますので」で説明を遮らない

「会議時間の変更は聞いておりますので、変更後の時刻に合わせて準備いたします」のように、後ろへ対応を続ける使い方があります。

一方、相手が説明している途中で「それは聞いておりますので」と切ると、続きを聞くつもりがないように受け取られることがあります。
既に共有を受けていても、追加の変更点があるかもしれません。
「事前に共有を受けております。
追加で確認しておく点はございますか」と返せば、必要な情報を受け取る余地を残せます。

単に連絡へのお礼を伝えたいなら、「事前に聞いております。
ご連絡ありがとうございます」でも構いません。
話を終えるために敬語を長くするより、相手が今何を伝えようとしているかに合わせます。

間違えやすい形は、誰の行動かに戻って直す

お客様へ「担当者に伺ってください」と案内すると、尋ねるお客様ではなく、尋ねられる自社の担当者を立てる形になります。
この場面では「担当者にお尋ねください」「担当者にお聞きください」が適しています。

「弊社の担当から伺っております」も、社外へ自社内の共有を伝えるなら「弊社の担当から聞いております」と直せます。
ただし「担当に確認しております」へ替える場合は、実際に確認している必要があります。

「確認して聞いております」のように動作が重なって曖昧になる文は、「担当から聞いております。
資料との照合はこれから行います」のように、聞いたことと確かめることを別々に書くと状態が明確になります。

「お伺いする」は、文化庁の指針で習慣として定着した二重敬語の例に挙げられており、一律に誤りとは扱いません。
短いメールなら「伺っております」でも敬意を示せます。

「聞かせていただいております」についても、長いという理由だけで誤りとは決められません。
許可を受けて聞き、そのことを恩恵として捉える場面かを考えます。
単に社内の共有状況を伝えるなら「聞いております」、相手から聞いた内容を述べるなら「伺っております」とすれば、用件が簡潔になります。

送信前は、敬語と事実を別々に確かめる

まず、聞いた相手が自社側か、立てるべき相手かを見ます。
次に、聞いただけの情報、確認済みの事実、これから行う対応が混ざっていないか読み直します。

日程なら日時、資料なら版やファイル名、注文なら受付内容を具体的にし、必要な返答時期を添えます。
実際に送った後も、約束した確認や連絡を行って初めて対応が完了します。

まとめ

「聞いております」は、共有を受けたことを丁重に伝えられる表現です。
その後に相手の疑問への答えを続けると、言葉遣いだけでなく、仕事の状況まで伝わる返答になります。

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参考資料